【湯の印象】 もはやそういった問題ではない 【秘境度】 ここを秘境と呼ぶのは秘境さんに失礼
『究極の難所 究極の名湯』
世の中には「幻の秘湯」という温泉がある。ここはまさに存在そのものが幻。というより今までの温泉の既存概念外にある。あなたの目はこれからあなたの体を離れてこの不思議な空間へと入っていくのです。
まずこの温泉は地図にはない。それどころかここに至る道も載っていない。地元高知の人でもまず知らない。電気は来てない。水道もない。もちろん電話はないし、おまけに人里から離れた行き止まりで携帯電話も圏外である。実際、入浴準備から撤去までの3時間もの滞在で作業用軽トラが1台しか通らなかった。こんな場所にあって、なおその難所たるゆえんは、自分で源泉を汲んで、自分で海岸の流木を拾って薪にして、自分で沸かさないと入れないことである。(涙)もうこうなると、アウトドアというよりも自衛隊のサバイバル訓練である。
現地にあるのはいわゆる五右衛門風呂と硫黄の臭いの源泉のタンクとスノコ代わりの物流パレットと温泉水汲み用のタライと屋根と煙突だけである。薪は海岸に流木がふんだんにあるが、木が湿るので雨の場合は自分で持っていったほうが良い。良い湯加減に沸くまでに小一時間。
しかし文字通り地図に道なき道をはるばると辿り着き、これだけの手間ひまかけて入る温泉は格別である。なんてったって目前は人っ子一人いない太平洋。水で埋めながら身をかがめて入る五右衛門風呂温泉がこれほど気持ちが良いとは、来た者しかわからない。働いた後の空腹にまずいものなし。名実ともに四国温泉88箇所最大の難所と呼ぶにふさわしい「名湯」である。
ちなみに、このときほど助役Mが温泉88箇所企画委員であってくれてよかったと思ったことはない。彼は徳島の山奥で生まれ育って中学生になるまで「燃料といえば薪のことだと思っていた」という「クロマニヨン人」である。その彼あって初めて挑戦できた温泉である。皆さんも手近でそういう奴をそそのかして連れてくること。どうしてもあてのない人はわれらが助役を1回いくらでお貸ししても良いので連絡ください。(笑)ちなみにこのとき以来、彼は委員の間で「チャッカマン」と呼ばれています。
|
「土佐佐賀の町から山に向かう一本道を30分。分岐点の茂みの中に看板が倒れているので、まずはこれを見つけることから。ここからはガードレールのかわりにタコ糸が張ってある絶壁コース。」
土佐佐賀の町から山に向かう一本道を30分。分岐点の茂みの中に看板が倒れているので、まずはこれを見つけることから。ここからはガードレールのかわりにタコ糸が張ってある絶壁コース。
「看板からリアス式海岸の急坂を下りると15分で温泉到着。前面は太平洋の大海原である。台風のときは流されると思うのだが。」
看板からリアス式海岸の急坂を下りると15分で温泉到着。前面は太平洋の大海原である。台風のときは流されると思うのだが。
「浴場。もちろん一人しか入れない。手前のタンクに源泉からパイプがつながっている。」
浴場。もちろん一人しか入れない。手前のタンクに源泉からパイプがつながっている。
「中学生の頃まで家では薪で風呂焚きをしていた助役Mでも沸かすのに1時間かかった。」
中学生の頃まで家では薪で風呂焚きをしていた助役Mでも沸かすのに1時間かかった。
「ただひとつの説明板。(すべての画像はクリックすると拡大します) 平家の落人だろうが、伊能忠敬だろうが、はたまた巨大サメだろうが、もうなんでも言ってくれてオッケーである。(笑)」
ただひとつの説明板。(すべての画像はクリックすると拡大します) 平家の落人だろうが、伊能忠敬だろうが、はたまた巨大サメだろうが、もうなんでも言ってくれてオッケーである。(笑)
|