湯の印象 B 秘境度 3
『今に見とれよ』
四万十町の旧十和村は大きくS字を描いて流れる四万十川の中流に位置する村である。四国最長を誇る四万十川は大河である「下流域」と、たくさんの沈下橋と田園風景とを観光雑誌に紹介される「中流域」、そして山深い棚田の間を縫うように流れる本来の清流「上流域」に大きく分かれる。この中流域において四万十川は数多くの支流を集めることになるのであるが、それについての詳しくは姉妹サイトである『四国堰堤88箇所巡り』を参照されたし。そして最大の支流である『梼原(ゆすはら)川』流域のいくつもの支流が四万十本流に合流するエリアにあたるのが十和である。川はこのあたりから幅を広げ、大河の様相を下流方向に行くほどにそろそろとかたちづくっていくのである。
川は支流と合流するたびに小さく蛇行を繰り返し変化にとんだ景色を見せる。その川沿いに走る国道381号線とJR予土線のおかげもあって、このあたりは最近の「四万十観光」の中心スポットであり、10キロごとにある道の駅をはじめとしてキャンプ場や農村民宿も数多くそろっている。そんな中で日帰り温泉として昔から地元に愛されてきたのが『十和温泉』である。
温泉の親父さんに言わせると、これだけ四万十が有名になっても、地元からすると「まだまだ観光客が少ない」そうである。高知自動車道路は80キロ先の土佐久礼まで伸びて(2011年現在)いて久礼のかつお祭りや久礼大正市場には人があふれかえっている。この高速道路がもうすぐ四万十川中流の中核である旧窪川町まで達する。四万十町は「その日」を「今に見ていろ」と待ち望んでいる。一方、現在、終点の土佐久礼町は「その日」に対して大きな危機感を持っているようである。もはや通過点になってしまうということであろう。しかし高速道路もいずれは四万十町を越えて、足摺岬や宿毛までも達するに違いない。「その日」が訪れたときが「次の日」の心配が始まるときである。鉄道や道路の開通よりも、まずは自分の街が「もう一度、訪れたい町」となるように何をすべきかは、高知どころか全世界のすべての観光地の永遠の命題でもあるように思う。
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「国道381号線の十和の町(駅は十川駅)に銭湯のように建っている」
国道381号線の十和の町(駅は十川駅)に銭湯のように建っている
「湯船は小さく露天は使用不能となっている。が外を流れるのは紛れもないパンフレットで見るとおりの四万十川である。」
湯船は小さく露天は使用不能となっている。が外を流れるのは紛れもないパンフレットで見るとおりの四万十川である。
「毎年ゴールデンウィークには、温泉近くの国道沿いのパチンコ店付近より四万十川を渡す2連の鯉のぼりが泳ぐ。地元にとっては微笑ましい風景が都会に行くと「名所」となる。」
毎年ゴールデンウィークには、温泉近くの国道沿いのパチンコ店付近より四万十川を渡す2連の鯉のぼりが泳ぐ。地元にとっては微笑ましい風景が都会に行くと「名所」となる。
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