湯の印象 A 秘境度 5(ただし地理的秘境度は3)
『高きハードルを越えて』
ここ『口屋内(くちやない)部落』は、四万十川の河口から遡上すること約30キロ、幾多にも分かれる四万十川の支流のうち、最後の清流と謳われる『黒尊川(くろそんがわ)』との分岐点に位置する古くからの村である。土地の人に聞くと昔は交通の要所としてそれはそれは栄えたそうで、土地の小学校は百年も続いている伝統校。その小学校もついこのあいだ最後の全校生徒8人を見送って廃校となった。若い人は下流の中村どころか高知市、否、それならまだしも関西や東京に出て行ってしまうのである。ご多分にもれない過疎化地域である。
古くから残る『口屋内沈下橋』は先の大水で墜ちて補修中。川の左岸を走る国道441号線の赤鉄橋を渡ってキャンプ場のある右岸に出てそのまま川沿いの道を車で5分ほどでプレハブの小屋が見えてくる。
ここはその昔に自衛隊が道を造成していた時に湧き出した温泉である。ここ20年ほど廃湯にしていたのを、最近再び手を入れて復旧させた地元の人が憩いをとるための湯である。もちろん無人、中には流しとトイレと8畳ほどの座敷とやや広めのホーロー製の男湯と少し狭めのスチール製の女湯があるが、貸しきり状態なのでどっちに入浴しようが誰にも文句は言われない。自分でバスタブに湯を張り自分で沸かすが、ガス湯沸し釜なので手間取らない。容量と材質の違いなのか男風呂より女風呂のほうが圧倒的に沸くのが早いので、少人数のときは女風呂を使うに限る。
しかし、ここに入浴するためには思わぬ通過儀式が必要とされる。施設を利用するためにはもちろん入り口の鍵を開錠せねばならないのであるが、自治会内で使いまわしで使用しているため、今、現在、村の中で「誰が鍵を保持しているかがわからない」。(笑)つまり村内の民宿からよろず屋さんまでを尋ねて廻りながら鍵を探さねばならない。その上、あなおそろしや、お店にいつも人がいるとは限らないのである。首尾よく入浴できたとしても、帰りしな今度は鍵が施錠できない。玄関の建付けが良くないので5分から10分は引き戸と悪戦苦闘すること必定である。
のどかな山村ののどかな温泉で一服するためには、それ相応の苦労が必要である。本当の田舎は都会の人が見るほど甘くはないのである。(笑)
近くのスポット 四国酒蔵88箇所43番『藤娘』 四国堰堤88箇所41番『中筋川ダム』
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「温泉のある山の山頂より四万十川の中流を望む。下の部落が口屋内である。」
温泉のある山の山頂より四万十川の中流を望む。下の部落が口屋内である。
「うっかりすると通り過ぎる道端の納屋である。」
うっかりすると通り過ぎる道端の納屋である。
「完全無人セルフのため、使用方法が明記されている掲示板。いわゆる屋外バーベキュー施設と同じである。利用料金は地区内の人にとって高いのか地区外の人に安いのか、よくわからない。(画像はクリックすると拡大します)」
完全無人セルフのため、使用方法が明記されている掲示板。いわゆる屋外バーベキュー施設と同じである。利用料金は地区内の人にとって高いのか地区外の人に安いのか、よくわからない。(画像はクリックすると拡大します)
「女湯の方が沸くのが圧倒的に早いがデブなら一杯一杯の湯船の容量。モデルは某社四国支社長。由美かおるでなくて御免。」
女湯の方が沸くのが圧倒的に早いがデブなら一杯一杯の湯船の容量。モデルは某社四国支社長。由美かおるでなくて御免。
「建物の真裏に源泉がある。」
建物の真裏に源泉がある。
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